読書の効果を最大化する“記憶の技術”

「本を読んだら放置すると…」。どうなるのか気になります。

以下、ネットニュースより抜粋。

本を読んでも、それをアウトプットにつなげることができなければ意味はありません。でも、読んでも内容をほとんど思い出せない人も多いはず。内容を血肉にしたければ、読んだあとすぐに何かアクションを起こしてはいけません。ある種の意図的な「発酵」の段階が脳には必要なのです――『一度読むだけで忘れない読書術』を上梓した世界記憶力グランドマスターの称号を持つ池田義博氏はいう。日本記憶力選手権で6年連続日本一にも輝いた同氏に聞いた。

※本稿は池田義博著『一度読むだけで忘れない読書術』(SBクリエイティブ)より一部抜粋・編集したものです。

「何もしない」は読書に重要

ここで紹介する読書法を「ほったらかし読み」と名付けましょう。この「ほったらかし読み」、何をするかといえば、実は何もしません。

何もしないとはどういうことか。本を終わりまで読んだら一旦何もせずに放っておくということです。ただこの手法はオールマイティーというわけではありません。目的は限定されます。例えば実用書などから情報を得て、すぐにその具体的な方法などを使いたい場合にはこの手法は向いていません。

ではどんな目的にこの手法が向いているかといえば、その本が伝えているテーマや主張や考え方などを自分の中に取り込んで、その概念の枠組みを自分のものにしたい場合や、その本からヒントを得ることによって、オリジナルのアイデアを生み出したい場合などにこの手法は向いています。

しかしなぜ読み終えてすぐに何らかのアクションを起こしてはいけないのでしょうか。その方が記憶はフレッシュな状態なので効率がいいように思えます。

東大・京大で一番読まれた本として有名な『思考の整理学』の中で著者の外山滋比古氏はこの何もしないでおく状態のことを「発酵」という言葉で言い表しています。手に入れた情報は、すぐに利用するのではなくしばらく寝かせておく、つまり発酵させることにより、新たな価値を生み出すのだと説明しています。

論文のテーマを何にしていいのか分からないと相談に来た学生に対して、まずは何もなければ始まらないのでまずその種、つまり素材となりそうなものを参考文献からピックアップしなさいとアドバイスします。

ただその時点ではその素材はそのままテーマにはなり得ないというのです。その素材を自分のテーマとして昇華させるためには発酵が必要だというわけです。参考文献をただこつこつ読み続けているだけではいつまでたってもテーマにはならないと。

原本に対して内容を理解したとしても、すぐにその内容を利用しようとすれば新しいものは生まれない。そこで時間をおいて頭の中でその内容を寝かせることで脳がそれを消化し新しい価値を持ったものに変化するのだと外山氏は言います。

これと同じようなことは過去の識者たちも唱えてきました。よいアイデアを生み出すためには当初、一生懸命考えるという過程は必要であるけれど、脳に負荷をかけて必死に考えた後はしばらく放っておく。そうすることによって脳内である種の化学反応が起こり新たなアイデアというものが生まれるのだと。

本の内容を忘れないだけでなく、応用できる

実際私も今までこの脳の性質を使ってたくさんアイデアを生んできました。これは心理学的にも正しいのです。このメカニズムを「レミニセンス現象」といいます。

皆さんは初めて自転車に乗れたときのことを覚えているでしょうか。たぶん一人で乗れるようになるまでは親などに後ろを持ってもらいながら練習したのではないでしょうか。

初めのうちは手を離された途端転ぶというパターンの繰り返しです。そういうことを毎日繰り返しているうちにある時、突然乗れるようになったのではないでしょうか。

なぜ急に乗れるようになったか分かりますか。たぶん、なぜだかは分からないけれどいつの間にか乗れるようになったというのが本音でしょう。

他にもスポーツをやっている方なら分かると思いますが、練習で何度やってもうまくいかないテクニックがあり、もうこのテクニックは自分には無理だなどと半ば諦めかけていると、あるとき何でこんなことができなかったかと思うくらいすんなりできる瞬間がやってきたりします。

楽器をやっている人もしかり。また勉強においても同様な現象が起こります。勉強すれどもさっぱり理解できなかったことがある日、まるで頭の中の霧が晴れたようによく理解できたりすることがあります。

レミニセンス現象とはこういった現象のことを指すのです。つまり学習したことが時間を経ることによって、その内容が高度化するという現象が起こり得るということです。

寝てる間も脳は働いている

練習したり学習したりすれどもなかなかすぐに成果が上がらない期間が必ずあります。その期間中というのは実は脳の中で情報を整理して利用できる形に整えている作業が行われている期間なのです。学習内容の熟成期間を経ることでその情報が単なる知識ではなく使える情報に生まれ変わることになるのです。

これも以前説明した記憶の仕組みによるものです。寝ている間に記憶が整理されてその後の学習を促進させたというわけです。

つまり学習したことがこのレミニセンス現象によって十分な効果を発揮するためにはある程度の時間が必要になるということなのです。直前に覚えた知識よりも、数日たった知識の方が整理されていて脳が使いやすい形に変わったということです。

さらに近年では、何もしていないぼうっとしている時間が実は脳にとっては重要なことであることが分かってきました。ぼうっとしている状態というのは頭が働いていないと思いがちですが、そんなときでも脳は働いているのだそうです。

その脳の状態をDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)と呼びます。このDMNは先ほどの睡眠と同じく脳内の情報整理の機能を持っているそうです。

このDMNが働くことにより脳内の情報がきちんと整理されて蓄えられた情報同士が結びつきやすくなり、新しいアイデアが生まれるというメリットもあるようです。

これらの脳や心理学上の特性から本から得た情報もすぐに活かそうとするのではなく、覚えてから睡眠を挟んで数日たってからの方が、情報が熟成の過程を経て脳にとって利用しやすいものに変わるということなのです。

もし新しいアイデアが必要な場合は、本を読み終わった後に数日おいてみてください。するとある日突然ひらめきが起こるというわけです。脳の偉大さが分かる瞬間です。

池田義博(記憶力のグランドマスター)

PHPオンライン衆知

 

情報にも熟成が必要なのですね。

しかも、ぼうっとしている時間が脳内の情報整理の機能を持っているとは、勉強になります。

ぼうっとする時間をもっと持ちたいな…。

感謝してます。

りくりとりっぷホームページ:http://rikuritrip.net/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

最近のコメント