「話が長い人」が無意識にやらかしている失態があるそうです。
以下、ネットニュースより抜粋。
「話をしているうちに、何を言いたかったのか自分でもわからなくなった」「あれも言わなければ、これも言わなければ、と詰め込んだ結果、何も伝わらなかった」……。 こんな悲しい経験をしたことがある人は、意外と多くいるのではないでしょうか。 言葉を端的にまとめるプロである、コピーライターの勝浦雅彦氏の著書『ひと言でまとめる技術』より、一部引用・再編集して「わかりやすく伝える」方法を紹介します。
■「言葉を知らない」のではなく「言葉が多すぎる」
「言葉を知らないので、言いたいことや考えをまとめるのが苦手です」という人がいます。私は、これは半分合っていて、半分間違っていると思います。
なぜなら、作家や詩人ならば、誰も書いていないような文体や表現を追い求めるのもうなずけますが、普通に社会生活を送っている人にそのような物言いは必要ないからです。
物事をわかりやすく説明するためには、小学校までに習った言葉で十分なのです。
ある研究によれば、現代社会にあふれている「情報」の量は、インターネットの登場を機に爆発的に増加し、江戸時代の一年分、平安時代の一生分の情報が、現代社会のたった一日で生まれ、消費されているそうです。
情報過多の現代においては、言いたいことを表現するにもさまざまな意見や価値観があふれていて、あまりに選択肢がありすぎるために「ひと言で言えない」状態になっているのです。
そのためには、大量の情報におぼれないために、「伝えるべき情報は何かを自分の頭で考え、ひと言にまとめていく練習」が必要です。
とある経営者の方から「仕事上、いろんなところでスピーチを求められるのだが、どうも話がうまく伝わらないし、盛り上がらない。朝会で社員向けにスピーチしている映像を見せるので、アドバイスをくれないか」と相談されたことがあります。
その際に私は、ひとつだけアドバイスをしました。
それは「5分限定でひとつの話題しか話さない」ということです。
映像を見終わったときに感じたことは、まず話が長いこと。毎週、大事件が起きるならいざ知らず、ましてや経営会議でもないわけですから、訓示に20分も必要ないはずです。
伝えたいことをひとつだけ選び、「今日はこれだけを話します」と前置きもすれば、社員の皆さんも「偉い人の話を全部聞かなければならない」というプレッシャーから解放されます。
経営者の目線からすると、つい目標の数字や、市場状況なども話したくなりがちです。ですが、それも伝わらなければ意味はありません。
このルールを実践した結果、社員の皆さんからのウケも良くなり、何より嬉しかったのが「何を話していたのかをしっかり覚えてくれていたこと」だそうです。
言葉を発するときには、「本当に伝えたいことは何か」を意識することがいかに大切かを実感した出来事でした。
■「ぼやけた全体像」を捨てる
教育業界の名のある方に、「伝えるコツ」についてお話を伺ったことがあります。
その方は、「話をするときは、まず地図を用意する。そのあとに、どう歩いたかを提示する」と答えていました。
これを私なりに解釈したのが、「全体像の提示→具体の提示」という順番で話すというものです。
最初に大枠で「話の要点」と「聞く人に何をしてほしいのか」を提示しないと、迷子がたくさん生まれてしまいます。
細部から話を始めると、全体像が見えていないため、聞いている側の思考もあっちこっちに飛んでしまうからです。
話をしているうちに自分でも何を伝えたかったのかわからなくなってしまう人は、とくにこの傾向が強いように思います。
では具体的にはどういったことか、ひとつあなたに質問をさせていただきます。
【問題】取引先から「発注した商品が届かない」という連絡が入りました。あなたならA・Bどちらの伝え方で上司に報告しますか?
A 部長すいません。X社から連絡があったのですが、担当のY課長が不在です。そのことで先方が、「発注した商品の到着はいつですか?」とイライラされています。どうすればいいでしょう……。
B 部長、トラブルのご相談よろしいでしょうか。X社から、発注した商品が届いていないことについて問い合わせが入っています。担当のY課長が不在で、誰も把握していないので、ご対応いただくことは可能でしょうか。
まず、Aの回答から見ていきましょう。状況を説明しているものの、「何をしてほしいのか」という点が欠落しています。
もしかしたら、「部長にトラブル処理を頼むなんて心証悪いかな。でも誰も解決できそうもないし……」という逡巡があり、「状況を並べ立てれば察してくれるかも?」と考えているのかもしれません。
ですが、ほとんどの人間は明確に要請をしないと動けません。
「どうすればいいでしょう」という意見も、素直にそう思ったのも理解はできますが、仕事の場においては必ず、「自分自身の仮説」が大切です。
「どうすべきか」「どうしてほしいのか」を考えるクセをつけましょう。
正解であるBは、「納品されるべき商品が届いていないというトラブルの相談である」という全体像をまずひと言で伝えています。このことで、部長は現状で何が起こっているのかを把握することができます。
そのうえで、「誰も把握していないので、部門責任者である部長に対応してほしい」と、はっきりと依頼しています。
トラブルの全体像を明確に伝えることで、聞き手である部長に何をしてほしいのかが明確になりました。
これならば、聞き手は「どうするか」を決めることができます。
人に何かを伝えるときには、物事を全体像でとらえて、それから具体に落としていくクセをつけ、相手を迷わせないように「ぼやけた全体像を捨てる」ようにしてください。
■目的地を明確化して迷子を生まない
この方法をより明確化したのがじつは漫才です。
漫才を見ていると、新人の芸人さんが「名前だけでも覚えて帰ってください」などと前フリのひと言を入れることがあります。
これは、「この先にいろいろネタをやるけど、今日のゴールは名前を覚えてもらうことですよ」と、目的地を先に提示して誘導しているわけです。
仏教でも目的地の明確化がいかに重要かを示した寓話があります。 「群盲象を評す」というお話です。
あるとき、6人の盲人たちに象に触れたときの印象を問うたところ、各自の答えはまったく違うものだったそうです。
●象の鼻を触った者は「蛇」 ●耳を触った者は「扇」 ●牙を触った者は「槍」 ●足を触った者は「壁」 ●尻尾を触った者は「ロープ」
そう、誰一人として「象」の全体像を捉えてはいなかったのです。
このとき、誰かが「あなたが触っているのは象だよ」と最初に教えたなら、自分が象のどの部分に触れているのかを判断することができたでしょう。
何かを伝えるときは、部分的に伝えるのではなく、とにかく目的地を明確にして相手に提示することが大切なのです。
もうひとつ、相手に伝わりやすくするために大切なことは、余分なものを捨てることです。
ですが、捨てることが大切なこととわかってはいても、人間は「捨てること」が苦手です。
●押し入れに「すぐには使わないけれど、いつか使うはずのもの」があふれている →「いつか使うはずのもの」を使うことは、ほぼ確実にない
●洋服ダンスに「いつか着るはずの衣類」がぎっしり →もはや自分がそのサイズは入らなくなったことすら気づかない
●ハードディスクに「以前、仕事で使用した資料ファイル」が満載 →99%読み返すことはない。そもそも思い出すことすらない
「何かを失うことが怖い」というのは、人間の本能です。しかし、捨てることを恐れていると、「ただの話が長い人」になってしまいます。
何分にもわたってプロポーズを述べているドラマを見たことがあるでしょうか?
ないはずです。延々と冗長なプロポーズを聞かされたら、相手はいくら好きでもだんだんと不安になってしまうはずです。
私たちコピーライターの世界でも「情報過多は、伝えないより悪手である」というのは常識です。あれもこれも詰め込み過ぎると、何も伝わらないどころか「余裕もセンスも感じられない広告」ができあがってしまうのです。
■「伝える」と「伝わる」の違いとは?
あるとき、同じ業界の大先輩にこんなクイズを出されました。
「伝える」と「伝わる」の違いはなんでしょう?
私は必死に考え、
●伝える ⇒ 伝えるという「行為」 ●伝わる ⇒ 伝わったという「状態」
このような違いだと答えました。
するとその先輩が、「それは間違いではないけれど、英語にしてごらん。よりその違いがわかるよ」と言うので辞書で調べてみたところ、私は思わず「あっ」と叫びました。
●伝える ⇒ TELL ●伝わる ⇒ GET
そう、伝わるは「GET」だったんです。
つまり、伝わるということは「何かを得ている状態」と定義することができるのです。
「一方的に伝えるのではなく、相手に伝わって初めて、何かを得たり、生み出したりすることができる。言葉を使う職業を続けていくのなら、このことを忘れちゃダメだよ」という先輩からの教えは、私の大切な言葉の手帳にキープされています。
もしあなたがいま、ちゃんと伝わったか不安になっていたら、自分の言葉や話が言いっぱなし、伝えっぱなしになっていないか、相手の表情や行動などから、見極めるようにしてみてください。
勝浦 雅彦 :コピーライター、法政大学特別講師、宣伝会議講師
東洋経済オンライン
話しをする際に、頭の片隅におくようにしたいと思いました。
感謝してます。
りくりとりっぷホームページ:https://rikuritrip.net/