科学が解き明かす心と免疫の深いつながりだそうです。
以下、ネットニュースより抜粋。
誰もが経験する「ストレスと体調不良」の謎
「大事な仕事の前や心配事が続いた後で、決まって風邪をひいてしまう…」そんな経験はありませんか?多くの人が「気のせいかな?」と感じるこの現象ですが、実は科学的な裏付けがあります。近年の研究により、私たちの心(ストレス)と、体を守る防御システム(免疫)との間には、驚くほど深い関係があることが明らかになってきました。
この記事では、「なぜストレスを感じると感染症にかかりやすくなるのか?」という疑問について、科学的な研究結果をもとに、その仕組みを分かりやすく解説していきます。
1. ストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」がある
まず、「ストレス」とは何でしょうか。簡単に言うと、ストレスとは、外部からの挑戦的な出来事や状況(ストレッサー)に対する、私たちの心と体の反応のことです。そして、ストレスには大きく分けて2つの種類があります。
- 短期的なストレス(急性ストレス)これは、いわゆる「闘争・逃走反応」と呼ばれるものです。目の前の危険や課題に立ち向かうために、体が一気に臨戦態勢に入る状態を指します。実は、このタイプのストレスは、怪我や感染といった潜在的な脅威に備えるため、一時的に免疫システムを活性化させる効果があると言われています。
- 長期的なストレス(慢性ストレス)一方、問題となるのがこちらのストレスです。仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、経済的な不安などが長期間続く状態を指します。この慢性的なストレスこそが、免疫システムを弱らせ、私たちの健康に悪影響を及ぼす主な原因となるのです。
2. 心のストレスが「免疫システム」に伝わる仕組み
では、目には見えない心のストレスは、どのようにして体中の免疫システムに影響を与えるのでしょうか。これを、体の中の「司令システム」に例えて説明します。
- まず、脳が「ストレスだ!」と認識すると、体全体に警報を発令します。
- 次に、この警報を合図に、副腎からコルチゾールやアドレナリンといった「ストレスホルモン」が放出されます。
- 最後に、これらのホルモンが血流に乗って全身を巡り、「メッセンジャー」として、体中に散らばる免疫細胞に「ストレス状態である」という指令を伝達します。
このようにして、脳で感じたストレスの情報は、ホルモンを介して直接、免疫システムに伝えられるのです。
3. なぜ「慢性ストレス」は免疫力を低下させるのか?
ここが最も重要なポイントです。なぜ長引くストレスは、免疫力を下げてしまうのでしょうか。その鍵を握るのが、ストレスホルモン「コルチゾール」の働きです。
コルチゾールの本来の役割の一つに、炎症を適切にコントロールする「ブレーキ役」があります。感染が起きたとき、免疫細胞はウイルスと戦うために炎症反応を起こしますが、戦いが終われば、この炎症を鎮める必要があります。コルチゾールはその「鎮静」のサインを送るのです。
ところが、慢性的なストレスにさらされると、免疫細胞は常に大量のコルチゾールを浴び続けることになります。すると、免疫細胞はコルチゾールの「止まれ」という指令に慣れきってしまい、次第にその言うことを聞かなくなってしまいます。まるで、同じことを何度も言われ続けて「耳を貸さなくなる」ような状態です。
この結果、炎症の「ブレーキ」が効かなくなり、免疫反応が暴走してしまうのです。ここで知っておきたいのは、鼻水、喉の痛み、咳といった風邪の症状の多くは、ウイルスそのものではなく、ウイルスと戦うために引き起こされる「炎症反応」によって生み出されているということです。つまり、ブレーキが効かずに過剰になった炎症反応は、よりひどい風邪の症状を引き起こす原因となるのです。
4. 科学的根拠:ストレスで病気になるって本当?
この「ストレス→免疫低下→病気」という流れは、科学的な実験でも証明されています。
研究①:風邪ウイルスを使った実験
1991年に行われた有名な研究では、健康なボランティアのストレスレベルを測定した後、点鼻薬を使って意図的に風邪ウイルスに感染させました。その結果は明らかで、ストレスレベルが高い人ほど、実際に風邪の症状を発症する確率が高いことが示されました。最もストレスレベルが低かったグループの発症率が約**27%だったのに対し、最も高かったグループの発症率はその倍近い47%**にものぼりました。この「ウイルスチャレンジ」と呼ばれる実験モデルは、ウイルスにさらされる条件を完全にコントロールできるため、単なる相関関係ではなく、ストレスが発症の直接的な原因になることを証明する非常に強力な方法です。
研究②:重篤な感染症との関連を調べた大規模調査
ストレスの影響は、風邪だけにとどまりません。2019年にスウェーデンで行われた大規模な調査では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、医師にストレス関連障害と診断された人々は、敗血症や心内膜炎、髄膜炎といった生命を脅かすような重篤な感染症にかかるリスクが著しく高いことがわかりました。特にPTSDの患者では、そうでない兄弟姉妹と比較して、これらの深刻な感染症にかかるリスクが1.92倍も高かったのです。影響を受けていない兄弟姉妹と比較するこの研究方法は、遺伝や幼少期の家庭環境といった交絡因子(結果を誤って導く可能性のある要因)の影響を最小限に抑えることができるため、ストレス関連障害そのものと感染症との関連性をより強く示すことができます。
5. まとめ:心をケアして、免疫力を守ろう
「ストレスを感じると風邪をひきやすくなる」という私たちの実感は、単なる気のせいではなく、科学的に証明された事実です。慢性的なストレスは、免疫のブレーキ機能を狂わせ、体が感染症と戦う力を弱めてしまいます。
現代社会でストレスを完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、長期にわたる慢性的なストレスを上手に管理することが、自分自身の免疫力を守るための強力な手段になることは間違いありません。
運動や瞑想、認知行動療法といったストレスマネジメント法が、心だけでなく免疫機能にも良い影響を与えることが研究で示されています。
心の健康を大切にすることが、からだの健康を守る第一歩です。
YouTubeチャンネル:くつ王アカデミア「「ストレスを感じると風邪をひきやすくなる」は本当?心と免疫の関係」
※ 本記事は下記の参考文献を元にNotebookLMが生成した文章を筆者が加筆修正したものです。
参考文献:
1. The Impact of Everyday Stressors on the Immune System and Health Citation:Seiler A, Fagundes CP, Christian LM. In: Stress Challenges and Immunity in Space. Springer, Cham; 2020. pp. 71–92.
2. Chronic Stress, Glucocorticoid Receptor Resistance, Inflammation, and Disease Risk Citation:Cohen S, Janicki-Deverts D, Doyle WJ, Miller GE, Frank E, Rabin BS, Turner RB. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012;109(16):5995–5999.
3. Immunology of Stress: A Review Article Citation:Alotiby A. J Clin Med. 2024;13(21):6394.
4. Stress-related Disorders and Subsequent Risk of Life-Threatening Infections: Population-based Sibling-controlled Cohort Study Citation:Song H et al. BMJ. 2019;367:l5784.
忽那賢志 感染症専門医
心とからだは繋がっていると誰かが言っていたような(?)気がします。
感謝してます。
りくりとりっぷホームページ:https://rikuritrip.net/