日本のビジネスパーソンの脳は疲れ切っているそうです。
以下、ネットニュースより抜粋。
これまで10万人の脳を診断してきた脳神経外科医・奥村歩先生は、近年の診察を通して「30代〜50代のビジネスパーソンの脳があまりにも疲れ切ってしまっている」ことを強く実感しているそうです。「しっかり休んだはずなのに疲れが残っている」「なぜか頭が働かず、仕事に集中できない」といったことがあれば、それは脳が疲れているのかもしれません。そこで今回は、奥村先生が脳疲労を解消するノウハウや知識をまとめた著書『10万人の脳を診てきた脳神経外科医が教える 脳を休めて整える習慣』から、一部を抜粋してお届けします。
◆30〜50代が、極度の脳疲労に陥っている
日本のビジネスパーソンの脳は、ほとんどが過労に陥っています。
□すぐやることが苦手
□人から話しかけられたとき、パッと反応できない
□書類を読んでも、内容がスラスラ頭に入ってこない
□疲れが取れなくて頭が働かない
□イライラすることが増えた
□三日坊主で、何事も続けられない
これらは近年、メモリークリニックである私の診療所を受診される方から多く寄せられる悩みです。
メモリークリニックとは、いわば「脳機能の問題について専門的に扱う病院外来」のこと。私は20年以上、このメモリークリニックで診療を続けています。
近年、診察をしている中で気づいたことがあります。
それは、患者さんの年齢層や悩みが、劇的に変わってきていることです。
2000年代前半、受診されるのは認知症の高齢者がほとんどでした。ところが、この十数年で、メモリークリニックを受診される患者さんの年齢が明らかに若年化しているのです。現在では、30〜50代の働き盛りの方が、全体の受診者の半分を占めるようになってきました。
そして、そのほとんどが「仕事の能率が以前よりも低下していること」を心配して来院されます。
そこで当院は、そのような悩みを抱える患者さんの脳を精密検査してみることにしました。
すると、多くの方が、前頭葉の機能が著しく低下していることがわかったのです。
前頭葉は、まさに脳の司令塔。後述しますが、私たちが「疲れたな」と認識するための「疲労シグナル」を受け取る重要な中枢です。
つまり、日々の過度な情報処理やストレスによって「疲労シグナル」を大量に受け取りすぎた結果、前頭葉の機能が低下してしまっていたのです。
◆脳が「ゴミ屋敷化」している私たち
では、前頭葉の機能不全が、なぜビジネスパーソンにとって大きな問題なのでしょうか。私たちの頭では、情報の処理を以下の三段階で行なっています。
(1)情報のインプット
(2)情報の整理・整頓
(3)情報のアウトプット
脳疲労によって前頭葉の機能が低下してしまうと、特に(2)の「情報の整理・整頓」がうまくいかなくなることが知られています。そして、情報の整理・整頓がうまくいかなくなった結果、脳がゴミ屋敷のような状態になってしまっているのです。
この状態では、いざというときに必要な情報が見つからず、適切な行動が取れなくなります。特に、マルチタスクや膨大な情報にさらされる現代では、情報の整理・整頓ができないことは致命的です。
例えば、あなたの脳を巨大な図書館だと考えてみてください。
この図書館には、毎日のように新しい本(情報)が次から次へと運び込まれてきます。そして、その本をジャンルごとに分類し、きちんと棚に収めてくれる優秀な司書(前頭葉)がいます。ちゃんと整理されていれば、必要なときに必要な本をサッと探すことができます。
しかし、もしこの司書が休む間もなく働き続けて、ヘトヘトになってしまったらどうでしょうか? 整理が追いつかず、多種多様なジャンルの本が、館内の通路に散らかり放題……。
そうなってしまうと、必要な本を探すのにとても時間がかかってしまいます。
これこそが、現代のビジネスパーソンが直面している「脳の現実」なのです。
◆心も体も、結局は「脳」が疲れていた
さて、それではなぜ、現代の30〜50代が極度の脳疲労に陥ってしまっているのでしょうか。このことを考えるにあたって、まずは「疲労」「脳疲労」というものについて、もう少し掘り下げてみましょう。
あなたは今、疲れていますか?
ちょっとだけ、自分の体の声に耳を傾けてみてください。
「どちらかと言えば、疲れている」
「疲れているし、肩も凝っている」
恐らく、多くの方が「疲れている」と感じているのではないでしょうか。
実際、一般社団法人日本リカバリー協会が2024年に行なった大規模なインターネット調査「ココロの体力測定」によると、「疲れている(高頻度+低頻度)」と回答した人は78.3%にも上ります。
つまり、なんと日本人の約8割が、日常的に何かしらの「疲れ」を感じているのです。
では、そもそも「疲れ」とは一体、何なのでしょうか?
一般社団法人日本疲労学会では、「疲れ(疲労)」を次のように定義しています。
疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた
独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である
この定義からもわかるように、古くから「疲労」は大きく二つに分けて考えられてきました。「身体的疲労」と「精神的疲労」です。
私たちは普段の会話でもこれらを使い分けています。例えば「昨日は5キロメートルも走ったから疲れた」は身体的な疲労ですね。一方で「1日中、クレーム対応にかかりきりで疲れた」は精神的な疲労です。
しかし、この身体的疲労と精神的疲労は、はっきりと区別できないことも多くあります。心が疲れて、体がだるくなったり調子が悪くなったりすることもありますし、その逆に、体が疲れて、やる気が出なくなったり集中力が続かなくなったりすることもあります。私たちの毎日の活動のほとんどが、心と体の両方に負担をかけているため、「どっちの疲れが原因なのか」を特定するのは非常に難しいのです。
そこで近年、こんな考え方が注目されています。
身体的疲労も精神的疲労も、その根本的な原因はすべて「脳疲労」にある。
この新しい視点こそが、あなたの「疲れ」を解決するカギになります。
◆覆された「乳酸=疲労物質」説
長時間、頭をフル回転させて考え事をしたり、人間関係や仕事でストレスを感じたりした後のぐったり感。これが「脳疲労」であることは、多くの人が感覚的に理解しやすいでしょう。しかし、運動した後の疲れ、例えばマラソンを走り切った後のような体の疲労は「筋肉が疲れたから」「筋肉に乳酸がたまったから」のように、脳とはまったく関係がないと思われがちでした。
かつて、この「乳酸=疲労物質」という考え方は、絶対的な真実のように信じられていました。そのルーツは、1922年にノーベル生理学・医学賞を受賞したイギリスの生理学者アーチボルド・ヒル博士の有名な実験にあります。彼はカエルの筋肉に電気刺激を与えると、筋肉の動きが悪くなり、同時に筋肉中の乳酸が増えることを見つけました。これが、「乳酸=疲労物質」説の始まりです。
しかし、その後の科学の進歩は、この説を完全に覆しました。
今では、数え切れないほどの研究によって、「乳酸は疲労の原因物質ではない」ことがはっきりしています。それどころか、乳酸はエネルギー源になったり、疲労からの回復を助けたり、むしろよい働きをしているとまで考えられているのです。
◆「脳疲労」を引き起こす真犯人は?
では、乳酸が犯人ではないのだとしたら、一体何が私たちを疲れさせているのでしょうか。
最新の研究で今、最も注目されているのが「疲労因子FF(Fatigue Factor)」と呼ばれるものです。これは特定の一つの物質ではなく、疲労に関連するさまざまな働きを持つタンパク質の総称です。
例えば、体を激しく使ったり、強いストレスを感じたりすると、筋肉細胞や神経細胞が過剰に活動し、その過程で「活性酸素」という物質が発生します。この活性酸素は非常に毒性が強く、細胞を傷つけてしまうことで知られています。
この活性酸素で傷ついた細胞を修復しようと、私たちの体は、免疫細胞からある種のタンパク質を放出します。この細胞修復のために発生したタンパク質こそが、疲労因子FFの正体です。
そして、この疲労因子FFは、血液に乗って脳へと運ばれます。脳に到着すると疲労因子FFは「疲労シグナル」を送り、脳はこのシグナルを受け取ることによって「疲れた」と認識することがわかっています。最近の研究で、この疲労シグナルを感知する場所は、前頭葉の一部である眼窩(がんか)前頭野であることも明らかになっています。
つまり、体がヘトヘトになったときも、心がクタクタになったときも、私たちは最終的に疲労シグナルを過度に受け取った前頭葉の悲鳴として、その感覚を認識しているわけです。これこそが、あらゆる疲れの根本にある「脳疲労」のメカニズムです。
※本稿は、『10万人の脳を診てきた脳神経外科医が教える 脳を休めて整える習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
奥村歩
婦人公論.jp
早めに疲労からの回復を心がけたいと思いました。
感謝してます。
りくりとりっぷホームページ:https://rikuritrip.net/